表題番号:2000A-038 日付:2002/02/25
研究課題西田幾多郎に於ける欧米思想の受容(1)
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 助教授 ニールス・グュルベルク
研究成果概要
 今回の研究の目的は、西田幾多郎の作品をデータベース化することによって、国内外の研究者に西田の著作を研究する為の必要な情報を提供することであった。
 データベースはSGML言語のアプリケーソンとしHTML4.0をベースにして開発したので、今後はインターネットを通して公開する予定である。
 西田哲学を研究する際、これまで様々な問題が指摘されてきた。
 一、 西田には夥しい数の著作があるが、一つの著作(或いはその中の一つの論文)の中に重複するところが多い。ところが、重複して出てきても、それ以前に既に説明されている場所を示す注などは一切ない。ということは、西田は、読者に自分の著作の全体を知ることを要求しているということになる。(実際西田は、主に弟子を念頭に置いて著作活動を行なった。)
 二、 西田は当時の日本哲学界の先頭に立って欧米の哲学思想を積極的に自分の体系に取り入れていたが、直接の引用は少なく、強引な解釈、或いは誤解も珍しくない。その上(一)で述べた重複の問題が重なると、正確な解釈は極めて困難になる。
 三、 日本で行なわれている西田研究は、上記の問題点を避けてきた。しかし、西田を外国語に翻訳する研究者の間では以前から取り沙汰されていることである。様々な試みの中で、特に1987年に発表された『自覚に於ける直観と反省』の英訳は、出典注釈の点で高い評価を得た。
 研究の目的は、上記の問題を解決する為に、デジタル技術を導入し、西田の著作をデータベース化して、既存の欧米哲学データベースを注釈に活用することである。結果的には(a)出版に向けて私の翻訳した部分に注釈をつけることと、(b)国内外の研究者にも利用できるように、西田の著作のデータベースをインターネットを通して公開することを目指している。現在、データベースには西田の代表的な著作(『善の研究』、『自覚に於ける直観と反省』その他)、西田の著作の翻訳文献目録や入手しにくい参考文献(例えばHaldane, The philosophical basis of biology)が収録されている。