表題番号:2000A-034 日付:2002/02/25
研究課題トリスタン・ツァラ研究(ダダ運動における思想と芸術の関係)
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 塚原 史
研究成果概要
 今回の特定課題研究においては、20世紀アヴァンギャルドの特徴的運動であったダダイズムの創始者トリスタン・ツァラの活動に、とりわけ思想と芸術の関係を軸として再接近することを試み、さらにダダの後世への影響を非ヨーロッパ地域において探ることに力を注いだ。前者に関しては、ツァラの生地モイネシュティ(ルーマニア)のツァラ協会と連絡をとり、その機関誌「カイエ・トリスタン・ツァラ」に執筆することができた。また、後者に関しては、福岡アジア美術館収蔵のアジア人アーティストの作品の研究をつうじて、ダダ的な方向のアジア的展開を実感することができた(この面での研究の展開は今後の課題となろう)。さらに、20世紀の芸術が表象の技法の完成への意思から離れて、コンセプチュアルな方向へむかうという経験を踏まえて、我が国でおそらく最初にコンセプチュアル・アートを実践した松澤宥氏とセゾン・アート・プラグラムの一環として対談したことは、ダダ研究を歴史研究の枠から解放する視界をあたえてくれた。
 資料の収集と整理に関しては、ディジタル機器によってダダ関係のデータを文字レベルから視覚レベルへと向上させる端緒がひらかれたというところである。21世紀を迎えた今日、20世紀文化研究の重要性をあらためて実感した一年であった。
 (著書としては、2000年10月に「人間はなぜ非人間的になれるのか」をちくま新書から刊行。)