表題番号:2000A-028 日付:2002/02/25
研究課題ドイツ原子力行政における連邦の指図権の法的性格と限界
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 首藤 重幸
研究成果概要
 まず、文献研究として、ドイツ原子力行政領域において、指図権が行使された事例の検討をおこなった。それによれば、そもそもドイツ基本法85条に定める指図権の行使は、戦後、実施されることなくきたが、原子力行政をめぐる連邦政府と州政府の対立のなかで、初めて本格的に登場することになったとの事実を確認することができた。カルカーの高速増殖炉SNR-300をめぐる指図権の行使をはじめとして、この権利の行使をめぐる連邦と州の対立は、政治過程としても極めて興味のあるものである。これをめぐる判例は、州には指図にたいする服従義務があるとの立場であるが、指図内容の実施方法に関しては、さらに州政府に裁量が残されている場合があり、その場合には、指図権も行使があっても、すぐに指図内容が実現されるわけではない。2000年5月、ドイツの現地調査において、ライラント・プファルツ州政府の原発担当者から、実際に指図権の行使の実態を聞くことができ、極めて興味ある情報を得ることができた。ラインラント・プファルツ州は、脱原発政策をとる社民党の強い地域であり、現地調査では、指図権問題以外にも有益な知見を得ることができた。
 以上のような成果を踏まえて、2001年2月には衆議院の議員会館で、原子力行政に興味のある国会議員に対して、指図権の行使を中心としたドイツ原子力行政の特徴をレクチャーする機会を得た(内容は、現在、テープおこし・校正を終了して製作中)。さらに、詳しい研究成果を作成中であり、2001年の9月には成果を公表できる予定である。