表題番号:2000A-027 日付:2005/11/17
研究課題ECと加盟国の権限配分―「EC法の優位」と専占理論―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 須網 隆夫
研究成果概要
 ECは、加盟国より国家主権の一部を移譲されて成立した組織であると通常説明されている。本課題は、このECに移譲されたと加盟国に残された権限との関係を法的に考察することを目的としたものである。両者の権限関係を考察するためには、ECが有する権限が、どのような性質を有するものであるかをまず明らかにする必要がある。そこで、ECの対外的な権限を素材にして、権限の性質を概観したのが、『ヨーロッパ対外政策の焦点』所収の「EU対外関係の法的基礎」という論文であり、ECの権限が排他的権限と競合的権限という二種類に区分されること、通商政策の権限は排他的権限であることを明確にした。しかし、本論文は出発点としての概念の整理を行ったに止まり、それだけではECと加盟国の権限関係は、未だ明確ではない。そこで、次に権利主体として国際社会に登場しているECの位置を明らかにするために、ECが当事者となっている国際条約の「直接効果」に関する欧州裁判所の判例を検討した。これが、早稲田法学に掲載した「ECにおける国際条約の直接効果―「条約の自動執行性」と「EC法の直接効果」―」である。国際条約の直接効果は、EC法の直接効果と同一レベルで議論されることが少なくない。しかし本論文は、ECが独自の国際法主体性を持つ以上、EC内部の法であるEC法の直接効果と、ECと域外第三国との間に締結された国際条約の直接効果は、理論的には同視できないことを証明しようとしたものであり、不十分ながらその目的を達成することができたと考える。今後は、これらの成果を前提にして、さらにEC法の優位と専占理論の関係を深めていく予定である。