表題番号:2000A-020 日付:2002/02/25
研究課題金融取引と市場メカニズム・法規制
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 近江 幸治
研究成果概要
 1990年代初頭から始まった、わが国のバブルの崩壊は、日本経済にさまざまな影響をもたらしたが、特に金融市場に与えたインパクトは計り知れない。金融市場は市場原理を基礎として機能するのであるが、しかし、市場自体は政府の政策に依拠するものである。したがって、金融に関する政策問題を離れて「市場」を論ずることはできない。そこで、これまでの研究成果をふまえ、「市場の成功と政府の成功」という視点の下に、金融取引市場と政策・立法の関係を動的に捉え、最終的には、金融取引に関する「セーフティ・ネット」の構築を考察しようとするものである。
 この研究には、以下の3つの主柱を立てている。①「市場の成功と政府の成功」は、イギリスでのパブリック・マネジメントに関する研究に端を発するものである。それゆえ、この関係の文献を収集し、市場と政府の成功の意味・意義を理論的に確認する。②1990年代に現れた、わが国の金融取引に関する重要な立法および政府の法政策的動向を、政治学的観察をふまえて、客観的に位置づける。③わが国の金融取引に関してなされた法律的判断=裁判所判例を、「市場の成功と政府の成功」との関係から検討する、である。
 2000年度は、特に、①の点を中心に研究を進めてきた。その結果、私の視点は、経済学的・行政学的・政策学的な「市場の成功と政府の成功」というポリシーの流れは、1980年代のイギリスから始まった「ニュー・パブリック・マネジメント」を起点とし、ブレアー政権やクリントン政権が主張する「第三の道」へと進んできた。しかし、その終点は、私たちが主張している「共生」社会(理論)であると考える。別掲の論文は、その主張上も、手法・理論的構成上も、これまで見られなかった独自の研究であると思われる。