表題番号:2000A-018
日付:2008/06/02
研究課題サプライヤーシステム契約の研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学部 | 教授 | 内田 勝一 |
- 研究成果概要
- 本研究の目的は、中小零細企業と大企業との間の取引関係を分析し、取引関係において法の果たす役割を検討することである。実際には極めて多様な関係が存在し、しかも業種により異なるのであるが、本研究では特定の企業との間の継続的かつ従属的な下請負関係を特徴とする「系列型構造」と、多様な業種の特殊な技術を有する中小企業が集積し、それらが蜘蛛の巣状のネットワークとして関係を結び、その基盤の上に不特定の大企業との取引関係が結ばれる「ネットワーク型構造」という二つの基本的概念を用いて分析をした。技術の観点からすると、中小企業の技術水準が低く、大企業の開発した量産型技術をより低コストで実現する場合には系列型構造が成立し、ネットワーク型構造は中小企業の有する技術水準が高度で先端的な場合に成立することが確かめられた。
「系列型構造」においては、社会経済的な従属性の故に、独立した当事者関係が形成されず、明確な権利義務関係からなる法的関係が取り結ばれることが少ない。「ネットワーク型構造」において、新規技術の共同開発を複数の企業間でおこなう場合には、一定の期日までに参加各企業が技術の完成をすることが内容となっており、契約による関係づけもみられる。しかし、一般的には、「ネットワーク型構造」においても契約的な関係が成立していないことが多い。取引の対象となる製品が大企業向けの試作品であることが多く、技術要求に臨機応変に対応することが必要であり、当事者の関心は新規技術の開発に向けられており、しかも試作品の価格は高額ではなく、常に瑕疵がないわけではないことも当事者間では理解されており、不履行による損害賠償が問題となることは少ない結果、固定性・画一性を特徴とする契約的・法的関係が取り結ばれることは少ないことが明確になった。
「ネットワーク型構造」の法学的研究は本研究が嚆矢であり、未だ未成熟である。今後、十分に実態調査をおこない、その結果を踏まえ、理論化を完成させ、独立した論考として公表したいと考えている。