表題番号:2000A-016 日付:2002/02/25
研究課題ドイツ親子法の研究  子の権利と子の福祉
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 岩志 和一郎
研究成果概要
 本年度の研究の第一の柱は、ドイツ民法中、子と父母との面接交渉に関する研究に割く予定であった。1998年の民法改正によって置かれた面接交渉に関する規定が、正面から、子と父母との面接交渉は子の権利であると規定し、かつ子の利益に合致すると宣言したからである。しかしながら、研究の過程において、面接交渉権を子の権利であると構成した場合に、子の側から面接交渉を実施しない父母に対して直接に面接交渉を請求しうるか、また請求して実現しない場合に強制することができるか等、権利と構成した場合の要件はもちろん、とりわけ手続きの問題が重要な検討課題として浮かび上がってきた。それら手続面においては、誰が未成熟の子に代わって請求するのか、また話し合いにも応じようとしない父母に対して、自らの義務を履行するよう段取りをつけ、なるべく自主的に面接交渉を実施するよう調整するのか、といった問題の検討がそれである。それらの手続については、民法改正に先んじて、青少年援助法が制定されており、その中で児童福祉の問題として対処する構造になっている。青少年援助法は、児童福祉に関する多様な問題を取り扱う法律で、その内容の検討は、逐語的に概念を決定していかなければ進まない。そのため、研究の方法として、青少年援助法に完全な翻訳を付することから始めることにし、現在その作業が進行中である。今回の研究の中で、この二年間のドイツ親権法の研究の締めくくりの作業として、98年に全面改正になったドイツ民法親権法の規定を全訳する作業を行い、その目的を達することができたが、それに続けて、青少年援助法の翻訳を公表する予定である。
 本年度の研究の今一つの柱は、人工生殖補助技術によって出生した子の身分関係につき、わが国での立法に向けての提言をして行くことにあった。その作業中、法務省より生殖補助医療関連親子法制の検討につき、法制審議会臨時委員を委嘱され、現実に立法作業の一端に加わることとなった。この作業はなお二年間継続する予定であり、これまで特定課題研究によって得た成果を、現実の場に反映させたいと考えている。