表題番号:2000A-003 日付:2002/02/25
研究課題ストルィピン改革における土地整理――混在地条制から区画地制へ――
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 鈴木 健夫
研究成果概要
 20世紀初頭のストルィピン改革は、共同体的土地所有から私的土地所有への移行を意図し、各農戸の独立した区画地経営を創出しようとする土地整理事業であったが、土地整理の実際的作業をみると、それは、なによりも、それまでの共同体的土地利用にみられた、そして西部ロシアの土地利用にもみられた、さまざまな種類の土地混在の清算であった。本研究では、まず、さまざまな種類の土地混在の実態を追究し、そうした土地混在を清算する土地整理がどのようにして、どれだけ実施されたかを解明することを目的とした。研究助成費は、そのための関連資料の購入に使用した。
 今回の研究を進める過程で、次のことが明らかとなった。まず、土地混在には、共同体外の、旧領主や他の共同体との土地混在と共同体内の各成員間の土地(地条)混在とがあり、したがって、土地整理にも、前者についての集団的土地整理と後者についての個別的土地整理(区画地化)とがあった。本研究では、ロシア中央部に限定し、具体的様相を追究した。共同体外との土地混在については、土地の分散、遠在、変則的な形状の解明から、混在がきわめて顕著に進展しており、農業経営を非常に非効率にしていたことが明らかとなった。共同体内の土地混在については、農戸当りの地条の数および各地条の大きさの解明から、多地条・狭小地条化が顕著にみられていたことが明らかとなった。土地整理については、工業地域と農業地域いずれにおいてもそれほど進展せず、また、実施された土地整理にあっても共同体的土地利用の要素がかなり存続していたことが明らかとなった。
 以上から、ストルィピン改革の不成功には、顕著な土地混在による土地整理の困難という歴史的事実がその原因としてあったということが結論づけられる。
 この研究成果は、論文「土地混在とストルィピン改革――ロシア中央部を中心に――」にまとめており、『早稲田政治経済学雑誌』に発表する予定である。