表題番号:1999C-016 日付:2002/02/25
研究課題障害者のための情報機器アクセシビリティー支援システムに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 藤本 浩志
研究成果概要
 先進諸国に類を見ない急激な少子高齢化により、我が国では加齢や病気に伴って身体の諸機能に障害を持った高齢者が増加している。他方、昨今の情報技術の進歩により、情報機器の普及とそれに伴う依存度は今後もますます増大していくと考えられる。このような背景を踏まえ、高齢者の自立した日常生活や社会参加を支援する意味で、情報機器を操作する際のインターフェースの親和性の向上が望まれている。
 パソコンに代表される情報機器を操作する際に、事実上スタンダードとなっているキーボードやマウスのみを入力インターフェースとして限定してしまうシステムによって、身体機能の一部が制限された障害者がハンディキャップを被ることになる。この問題は、身体残存機能に応じて様々な代替インターフェースを許容するシステム(以下、TAS;Total Access System)によって解決することが出来る。そこで本研究では、TASのコンセプトを提唱し、さらに実際に障害を持つ人に有用なシステムを開発しているスタンフォード大学の研究所とともに新たな代替入力デバイスの研究を行った。
 脳血管障害等の病気により、片麻痺となった障害者は両方の手を使ってキーボードを操作することができない。また随意な側も頻繁にキー入力操作を繰り返すことにより腱鞘炎等の発症が報告されている。そこで片側の手のみで操作でき、さらに腱鞘炎の原因となるキー押し込み動作を伴わない力入力デバイスの可能性に関して基礎的な研究を行った。実験の結果、指先の力でも十分に入力信号として利用が可能であることが確認できた。また筋骨格系の特性から、指の組み合わせに難易の差があり、避けるべきパターンも明らかになった。
 今後は、様々な形状のデバイスに対してこの指間の運動機能特性を評価し、片手入力デバイスとして、片麻痺の障害を持つ人のためのデバイスとともに、将来普及が予想されるウエラブルコンピュータの入力デバイスの可能性も検証していきたい。