表題番号:1999B-033 日付:2002/02/25
研究課題中国西南の仮面劇と基層文化の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 稲畑 耕一郎
(連携研究者) 文学部 助教授 和田 修
(連携研究者) 貴州民族学院 教授 タク 修明
(連携研究者) 貴州民族学院 講師 陳 玉平
研究成果概要
 中国全土の農村にみられる仮面劇は、中国文化の基層部分を考察する上で非常に重要な意味をもつ。それは、遥か遠い古代より、長い歴史を通して、連綿として伝えられてきたにもかかわらず、文字記録として留められることは甚だ少なく、また歴代の為政者からの弾圧や知識人からの?視を受けてきた。ところが、近年、民間の基調な文化として脚光をあび、いわゆる「儺戯」研究として多くのフィールドワークに基づいた豊富な報告が成されるに至った。従来は各地に奥深く入りこみ、未発見の「儺戯」儀礼・村落の活動を報告することに主眼がおかれたが、そうした基礎的報告がかなり整ってきた現在、次の段階として、儀礼音楽や舞踏・唱詞の比較研究、儀礼・演劇に現れる言葉の方言研究といった、テーマ毎により深化した分析が要望されるようになってきている。本研究では、西南という文化的に特殊な背景をもつ地域において、従来研究の比較的少ない文学的な視点から、主に素材を収集・分析し、演劇学・民俗学研究者と意見を交わしつつ、西南の基層文化を考察することを目的としてきた。
 1998年度より貴州省貴州民族学院、四川省川劇学学会の協力を得て国際共同研究チームを組織し、1999・2000年度に四川省東北部、貴州省安順地区、貴州省メイ潭県、貴州省遵義県などにおいて複数回のパフォーマンス調査並びに聞き取り調査を行った。1999年秋には早稲田大学演劇博物館館蔵仮面・傀儡に加え、本研究調査により得られた知見を用いて企画展示「仮面・傀儡・仮面劇_中国民間の儀礼と芸能」展を開催、来日した共同研究者の貴州民族学院タク修明教授、同陳玉平講師、貴州省安順地区博物館李業成館長、川劇学学会張中学会長等と活発な意見交換を行った。この交流により日中の研究者の協力体制が築かれ、またそれをふまえて更なる現地調査を積み重ね、各分担者が担当部分を論文にまとめて、並行して遂行する文部省科学研究費補助金基盤研究(C)による論文集を作成した。