表題番号:1999B-028 日付:2005/01/18
研究課題宇宙線中の超鉄核観測のための大面積シリコン検出器の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 長谷部 信行
(連携研究者) 理工学総合研究センター 教授 菊池 順
(連携研究者) 理工学総合研究センター 助手 小林 正規
研究成果概要
 宇宙線の起源や伝播を知るうえで超鉄核の観測は貴重な情報を与えてくれる。そこで我々は2004年に打ち上げが予定されているHNX(Heavy Nuclei eXplorer)探査機による超鉄核観測を視野にいれた地上の基礎開発実験を行なってきた。HNXプロジェクトのENTICE(Energetic Trans-Iron Composition Experiment)実験は、未だかつてないダイナミックな超鉄核領域を観測するプロジェクトで、シリコン検出器、チェレンコフ検出器、荷電粒子飛跡検出器からなり、観測する電荷範囲はNe(Z=10)~Bi(Z=83)以上、エネルギーは500MeV/n~3.5GeV/nの領域を微分エネルギースペクトル、3.5GeV/n以上の領域の積分エネルギースペクトルを高精度で観測する。この観測計画では、超鉄核の絶対強度がたいへん低いために、視野角をできるだけ広く持ち、電荷を高精度で分解する事が要求される。
 そこで、(株)浜松ホトニクスと協力して開発した大面積シリコン検出器(92×92mm、380μm thickness)の実用性を検証した。これは、PIN型検出器としては従来の4インチを大幅に上回る世界最大の6インチのPIN型検出器である。また、肉厚についても、PIN型としては国内で最厚の500μmの2倍となる1mm厚の検出器の製作に成功した。両検出器の実用性の立場から電荷・質量の決定精度に大きな影響を与える検出器の厚みムラを、放射線医学総合研究所のHIMAC重イオン加速器からの高エネルギーXeビームを用いて調べた。
 大面積シリコン検出器では、中心部の不純物濃度の増加による性能劣化を当初懸念していたが、中心付近で分解能が劣化する現象は見られず、放射線検出器として十分な性能が確保できた。位置による出力の揺らぎについては、当初の目標とはしてなかったが半値幅で約1.18%(380μm厚)、約0.56%(1mm厚)という結果が得られた。よって、肉厚の検出器を利用すれば全ての元素について高精度で弁別することが可能である事が明らかとなった。以上、試作した大型・肉厚シリン検出器のビーム実験結果から、HNX計画に十分使用できることが実証できた。