表題番号:1999B-025 日付:2002/02/25
研究課題健康増進を目的としたフィットネスファームの創生に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 村岡 功
(連携研究者) 人間科学部 教授 宮内 孝知
(連携研究者) 人間科学部 教授 中村 好男
研究成果概要
 本研究で創生しようとするフィットネス・ファームとは、「農作物の生育(「健康増進」に該当)に及ぼす土壌や肥料(「介入」に該当)の影響を調べるための実験農場」を念頭に置いた命名である。具体的には、健康増進に関わる様々なプログラムを早稲田大学所沢キャンパスを中心として実施し、地域住民に対して参加者を募り、同時に、社会調査の手法を駆使して「応募した人/しない人」の特徴を推計する。つまり、「どのような人が参加し、どのような人が参加しないのか」という特徴を明らかにする、これがフィットネスファームの第一の機能である。第二の機能は、「各々のプログラム(介入)が当人の健康状態あるいはライフスタイルをどのように改善するのか」についての検証である。そして、そこに参加した人がその後どのように運動を継続し、どのようなライフスタイル・健康状態を保持していくのかを観察・調査することによって、そのプログラムの社会的意義を評定するのが、第三の機能である。
 本特定課題研究助成を受けて、1999年度には各種フィットネスプログラムを実施し、参加者の特徴を分析した(第一機能)。その結果、①男性対女性の割合が1:2で、②50以上が半数を占め、③女性では主婦、男性では無職と、④比較的平日の自由時間が多いという特徴が抽出された。また、健康・体力及び運動・スポーツについての意識と実態を、市民と比較すると①健康・体力に、食生活や運動・スポーツの実践で注意を払いながらも、②いまだ運動不足と感じており、③定期的にウオ―キング、軽い体操、ハイキングを、④健康・体力つくりと運動不足という意識から実践している点が特徴的であった。
 次に、それらの参加者のうちウオーキングプログラムへの参加者を対象としてフォローアップを行い、その後のライフスタイル改善と定着への効果について検証した。その結果、プログラム参加群の日常活動量(日歩数)の平均値は有意に向上するものの、必ずしも全ての人が同様の効果を獲得するわけではなく、「運動やスポーツ」を自身の健康戦略として認識することが、日常生活活動量の増加・保持に影響していることが分かった。
 このフィットネスファームは、中高年期の健康意識・身体活動習慣やその後の疾患率などにどのように影響を及ぼすのかを検証するという観点から、単に「地域研究」という枠を超えて広く通用する理論モデルを構築する可能性を有するものであると期待できる。