表題番号:1999B-015 日付:2010/05/07
研究課題Ti系及びNb系層状酸素酸塩層間での光増感色素組織化による新規ナノ複合材料の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 黒田 一幸
(連携研究者) 理工学部 教授 菅原 義之
(連携研究者) 教育学部 助教授 小川 誠
研究成果概要
 Ti、Nb系層状結晶は厚さ約1 nmの半導体層が積層した規則構造を有し、インターカレーション能を有する。本研究ではTi, Nb系層状結晶-光増感色素複合体の合成、構造、および可視光誘起電子移動について検討した。可視光誘起電子移動反応は、光エネルギー変換という観点から注目され、多くの検討が行われているが、本研究は高い秩序性・規則構造を有する系を用いた点で新規なアプローチと言える。
 まず、酸処理してプロトン型とした層状チタン酸塩(CsXTi2-X/4X/4O4, Na2Ti3O7)にヘキシルまたはプロピルアンモニウムイオンをインターカレートし、光増感色素であるシアニン色素の溶液と反応させることにより色素のインターカレーションを試みた。XRD、吸収・蛍光スペクトル測定から、色素会合体と層状半導体が交互に積層したナノ複合体の合成を確認した。蛍光測定では、励起色素から半導体層への電子移動によると予想される消光を観察した。ESRスペクトルでは、可視光照射に応答して色素のラジカルジカチオンに帰属されるシグナルが現れた。さらに可視光照射に応答する伝導度も増加した。層が絶縁体であるモンモリロナイトを用いた場合、これらの現象は観察されなかったことから、色素会合体と半導体ホストが関与した可視光誘起による電子移動反応が起きたものと考えられる。またESRシグナルの減衰曲線から、用いるホストやシアニン色素の種類によって逆反応の速度を制御できることも見いだした。同様の方法でフタロシアニンの導入にも成功し、現在、より詳しい検討を進めている。
 また合成法の改良により、複合体を「2次元異方性を持つ透明薄膜」として得ることに成功している。さらに単結晶の層状ニオブ酸塩をホストとして用いた場合、色素の配列を3次元的に制御できることも明らかにしつつある。このように、より高い秩序性、異方性を有する系では、従来用いられてきた粉末系では得られなかった知見の集積が可能になる点で、その意義は極めて高い。