表題番号:1999B-014 日付:2002/02/25
研究課題光ネットワーク終端機器に対する太陽光無停電電源システムの実用化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 若尾 真治
(連携研究者) 理工学部 教授 小貫 天
(連携研究者) 理工学部 助手 田 宇鎮
研究成果概要
 情報化時代に向けて情報通信網は光ファイバケーブルに置き換えられつつあるが、この際、通信網の随所に配置されるケーブル終端用光通信機器や通信端末装置等への電源供給系の信頼性が近年特に重要視されている。銅ケーブルの場合には電話局の高信頼な電源装置からケーブルを介して給電できるが、光ファイバではこれが不可能となり、商用配電系統からの給電に頼らざるを得ないからである。特に、阪神淡路大震災等の広域災害が発生した場合、商用系統が停電すると広い範囲にわたって通信機能が麻痺してしまう恐れがある。本研究課題では、この様な状況に対処し得る光通信機器用バックアップ電源システムの開発を目指している。特に、実用化に向けて、太陽光発電電力を最大限に利用するとともに蓄電池容量を最小化し、所望の動作条件下でシステムを極力コンパクト・経済的なものにすることに重点を置いた。
 本研究では、まず、系統連系型と独立型の中間に位置し動作が非常に複雑である準自立型の開発システムに対し、システム内の各種パラメータの最適化作業の効率化と高精度化を目指し、太陽光発電システムの動作予測のための高精度計算機シミュレータの開発をおこなった。開発したシミュレータは、従来の太陽光発電システム解析法と異なり,あらゆる気象条件下でのシステム動作予測を高速計算機を用いて数分刻みの短い時間間隔で高精度におこなうことを可能とし,システム全体を視野に入れた各種パラメータの最適化設計を効果的におこなうことが可能となった。このシミュレータ開発の過程においては、パルス放電を用いた蓄電池残存容量の推定法や周波数応答特性に基づく蓄電池のモデル化手法等の蓄電池に関わる新たな特性解析手法の開発もおこなっている。次に、蓄電池充電状態を精度よく検出しシステム内の電力フローを論理回路を介して制御することで,絶えず災害発生後の所定期間の電力供給が保証できる様に蓄電池充電量を確保しながら,平時には日射量の利用率を最大に保ち,かつ商用系からの補充を最小限に抑えた経済的なインテリジェントシステムを実現可能とするマイコン内蔵型電力フロー制御電子回路の開発に取り組み、システム内の新たな電力フロー制御アルゴリズムを開発すると同時に、シミュレーションおよび実験の両面から、その妥当性と有効性を明らかにした。
 以上の成果は、従来の太陽光発電システムの設計方法とは異なる新たな有効なアプローチを提案したものであり,今後、より大規模な太陽光発電システムの設計に対しても、十分に適用・展開が可能なものと考えられる。