表題番号:1999B-011 日付:2004/11/06
研究課題物質のヘテロ構造ゆらぎと超感受率
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 上江洲 由晃
(連携研究者) 理工学総合研究センター 教授 山田 安定
(連携研究者) 理工学部 教授 近 桂一郎
(連携研究者) 理工学部 教授 角田 頼彦
(連携研究者) 理工学部 教授 小山 泰正
研究成果概要
 (1)リラクサーPb(Mg1/3Nb2/3)O3/xPbTiO3について,長距離秩序が大きな経歴依存性を示すこと,また電場を加えると非常に長い緩和時間(一日近くを要することもある)を伴って,長距離秩序度が発達することを見出した。(上江洲)
(2)relaxor現象に対して最も核心となると思われる2相共存の問題について、中性子小角散乱実験、及びギンツブルグ-ランダウ理論に基く理論計算を行った。実験についてはrelaxorそのものは小角散乱に寄与しないので、同様の緩和現象を示すMn酸化物系の磁気的2相共存について研究し、この物質中で確かに平均サイズ30nm程度の強磁性クラスターが、反強磁性母相の中に分布していることを確かめた。(山田)
(3)電荷秩序型強誘電体YFe2O4で構造相転移での対称性の低下に伴う誘電分散の消失を見出した。(近)
(4)強誘電体LuMn2O5では自発分極の出現等の変化に伴って,らせん磁気秩序の伝播ベクトルが変化することを見出した。(近)
(5)BaTiO3およびSrTiO3をベースとした,複合ペロブスカイト酸化物セラミックスを作成し,その構造と誘電応答特性を測定した。特にBa1-XLaXTi1-XCrXO(x=0.028) は,室温で3000を越える大きな誘電率と比較的フラットな温度特性、また2%以下の小さな誘電損失をもつことを見出した。これがリラクサーであることは今後さらに評価していかなくてはならないが,開発目標にしていた室温で誘電特性が大きくかつ損失の少ない鉛を含有しない化合物を開発することに成功した。(上江洲、近)
(6)Pd及びPtをベースにした3d遷移金属との無秩序合金で、不純物の種類によって原因の異なる、原子やスピンの配列に関する非整合な変調波の短距離秩序を中性子散乱で見つけた。この変調波の波長は不純物の濃度と共に連続的に変化し、母体のフェルミ面の形状の反映と考えられる。(角田)