表題番号:1999B-010 日付:2002/02/25
研究課題建築家今井兼次図面資料に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 入江 正之
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員講師 木村 謙
(連携研究者) 理工学部 教授 渡辺 仁史
研究成果概要
 平成11年度に開始された当該研究は今井兼次の人、作品に関する総合的研究に不可欠と思われる図面エスキース等の一次資料の基礎的な情報システム、インフラの構築を目的としている。(1)一次資料の保存修復〈燻蒸、ボックスによる整理〉(2)一次資料の経年劣化を配慮したフィルム化〈マイクロフィルム(ネガ)+アパチュアカード(ポジ)〉、データ化〈CD-ROMによる保存〉、第二原図、等のメディアにより複製保存、という展開を経て、初期の目的の一つであった一般への公開を前提とした(3)データベース化の段階を達成している。
 試作段階のデータベースの内容について以下に列記する。
1)フィルムからデジタル化された全資料3500点の作品別検索システムの構築
第一段階として、CD-ROMに記録されたデータを下に圧縮した画像を用いて、作品別(日本26聖人殉教記念施設、桃華等楽堂、等)検索、建築図書-詳細図-青図-スケッチ等の項目別検索が可能なサーバーとして立ち上げた。
2)1)のシステムにより検索された内容についてより細密な観察に耐え得るレヴェルまで再現された高画質画像のデータベース化により、拡大縮小の自由度が得られ、細部から全体にいたる連続的な分析が可能となった。一次資料とは別の視点における有効性も期待できる。
 以上、データベースの公開手法自体の研究とともに、今井兼次の総合的研究へ向けての試みとして、卒業論文という枠組みの中で日本26聖人殉教記念施設について分析を行った。エスキーススケッチを中心とした一連の資料を、現地調査による建築本体の観察からフィードバックするかたちで、あるシーンや部分的要素を手がかりに時系列的把握を試みた。
当面の間は学内、研究者に限定してデータの公開管理を予定しているが、これらを具体化する過程の中で、既往の作家研究、図面研究の成果から読解可能な所記に加えて、創作プロセスの緻密な吟味において大きな前進が期待できる。また異分野からのアクセスという点においても新しい道筋を開くことが期待できる。