表題番号:1999B-006 日付:2002/02/25
研究課題断層ガウジの精密年代測定による断層活動史の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 高木 秀雄
(連携研究者) 教育学部 助教授 小川 誠
(連携研究者) 教育学部 助手 重松 紀生
研究成果概要
 1999-2000年度のわれわれの成果は、次のようにまとめられる。
(1)日本列島でも有数の活断層である中部地方の跡津川断層系について、跡津川断層の露出の良好な天生露頭と、茂住断層を貫いた調査坑道内の断層ガウジを採取し、水篩・遠心機・超遠心機を用い、その細粒部分を5-2、2-1、1-00.35、0.35-0.05μmのフラクションに分離して、XRDによる粘土鉱物学的性状とK-Ar年代を明らかにした。その結果、跡津川断層系ではその断層活動に伴う熱水変質の年代を最も良く示す細粒部で約60Maの年代を示すことが分かった。この値は、従来予察的に求められてきた中央構造線の活断層部(四国)のガウジの年代や、中部地方の阿寺断層の年代(60-50Ma)とほぼ一致し、日本列島の活断層の発生は、従来考えられていたものよりもずっと古く、白亜紀末期~暁新世まで遡ることが明らかにされた。
(2)韓国南東部には、数年前より活断層が発見されており、日本の活断層との活動履歴の比較が重要のテーマとなっている。そこで、われわれは最も露頭が発達した蔚山断層(Ulsan Fault)の断層ガウジを採取し、その粘土鉱物学的性状とK-Ar年代測定を実施した。その結果、まだデータは不足しているものの約40Maと28Maという値が得られている。蔚山断層は南北走向で東傾斜の逆断層であり、東西圧縮場で活動したことが明らかにされている。したがって、40Ma前後に東西圧縮場になった要因として、太平洋プレートの運動方向が北北西から西北西へと転換した時期と、年代的にほぼ一致する点が重要であると考えられる。今後、この解釈をより確かなものにしたい。
(3)棚倉構造線から約40~50Maの年代が求められ、この年代が、断層ガウジと母岩の鉱物学的検討から、母岩の変質の時期に相当することが明らかにされた。現在、断層ガウジの微細構造から読み取れる断層の運動の歴史とK-Ar年代との対応を検討中であり、今年中にはその成果を発表する予定である。
(4)ネパールヒマラヤ、ランタン地域の主中央衝上断層帯(MCT)には、衝上運動の後に、正断層の運動が重複していることがわれわれの調査で初めて明らかにされつつある。その中でも、断層ガウジを伴う若い断層活動の時期を明らかにするため、断層ガウジのK-Ar年代測定を実施した。その結果、約3Maという若い年代が明らかになった。これは、MCTの最終的な活動時期を示しており、ヒマラヤの上昇を抑制する運動として位置付けることができる。
(5)断層の年代測定として、この研究で採取したシュードタキライト(地震の化石)について、Ar-Ar、 Rb-Sr、ESR、FT年代などを測定する予定である。