表題番号:1999A-909 日付:2002/02/25
研究課題通信・放送・コンピュータを融合するマルチメディア表現形式とその符号化方式の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際情報通信研究センター 助教授 亀山 渉
研究成果概要
 通信・放送・コンピュータを融合するマルチメディア表現形式を巡り、1999年度は日本にとって大きな転換が生じた年であった。というのも、1999年7月の郵政省電気通信技術審議会において、2000年から始まるディジタル衛星データ放送の方式として、それまで第1候補であったISO/IEC 13522-5(MHEG-5)の採用を見送り、新たにXMLベースのデータ放送方式を日本独自の方式として作成することに決まったためである。この決定を受け、実際の方式の策定作業は(社)電波産業会にワーキンググループが設置され、そこで行われることとなった。このため、本研究課題においても、この新しいデータ放送方式であるBML(Broadcast Markup Language)方式も検討することとし、実際にシステムを構築した上で、各種のマルチメディア表現方式との得失の比較についても検討を加えることとした。
 BMLの規格書は1999年10月に発行されたが、その規格を元に、ディジタルデータ放送方式を受信するプロトタイプシステムをPC上で作成した。言語はJavaを利用し、プラットフォームに依存しないようなソフトウェア構成を検討し、最終的に満足するシステムを構築することができた。特に課題となった点は、Javaのグラフィックス描画に関する部分であり、これに関して高速の描画アルゴリズムを考案し、実用的な性能を得た。本システムを様々なデータを与えることで評価した結果、BML規格の欠点並びに不備な点を多々発見し、それらをBMLワーキンググループのメンバに伝えることで、フィードバックを行った。その結果、データ放送方式の規格としてBMLは一応の完成度を持つことができたと考えている。BML規格の最大の問題点は、インターネットの諸規格と完全に互換性が取れていないことであり、このことは、通信・放送・コンピュータの融合を考える上ではかなり致命的な問題であると考える。今後は、このプロトタイプを更に整備し、次の研究のための土台として利用し、先に述べた点を更に検討していく必要があると考えている。
 一方、ISO/IEC JTC1/SC29/WG12においては、ISO/IEC 13522-5のXML表現方式を提案し、この提案は最終的にISO/IEC 13522-8規格(MHEG-XML)のベースとして採用された。ISO/IEC 13522-8によれば、いわゆるMHEG-5アプリケーションをXML形式で表現することができ、インターネットの諸規格との親和性もよい。現在、ISO/IEC 13522-8は標準化の最終段階にさしかかっており、2000年度内に正式に国際標準として発行の見込みである。
 以上のように、本研究課題に対して1999年度は、BML方式の実装と検討とISO/IEC 13522-8の標準化活動を通して、通信・放送・コンピュータを融合するマルチメディア表現形式についての第1段階の検討を終えたと考えている。今後は、本研究課題で得た成果を更に発展させ、究極の目標であるSuper Multimedia Integration Architectureに関する研究を進めていく。