表題番号:1999A-852 日付:2002/03/12
研究課題針電極コロナ放電場に生じるオゾンの生成解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 川本 広行
研究成果概要
 針電極コロナ放電場を利用する帯電器に生じるオゾンの発生率を理論的に導出し、オゾン生成の観点からレーザプリンタの帯電器への適用性について検討することを目的として、気体放電理論にもとづく解析を行った。解析の手順は、針対平板電極系を同心球電極系とみなして、これにタウンゼントの放電理論にもとづくプラズマ化学反応の定式化を行い、電界強度や電極寸法、正負コロナの違いなどに依存する微分反応率を数値積分することである。本研究の結果、以下の知見が得られた。(1) 発生オゾンの計算値は、空気流量5 liter/min、電極半径50 μmの条件で、負コロナの場合0.085 ppm/mA、正コロナの場合0.010 ppm/mAである。すなわち負コロナの場合には、正コロナに対して約8倍のオゾンが発生する。また、同心円筒電極系にくらべて球電極系のオゾン生成率は約1/2である。(2) 放電電極の曲率半径が小さいほど、オゾンの発生率が小さい。しかし集電電極の半径は、オゾンの発生率に影響を及ぼさない。正コロナの場合には、オゾンはほとんど放電電極表面で集中的に発生する。いっぽう負コロナの場合には、オゾンは放電電極表面から0.1 mm程度離れた場所で発生する。これが負コロナの方がオゾンの発生率が高く、電極材質の影響を受けにくい理由である。オゾンの発生率は、厳密には放電電流に対して非線形であるが、数100 mA以下程度では、ほとんど線形とみなせる。以上の特徴は、定性的には同心円筒電極系 (コロトロン) の場合と同じであり、実験結果とも一致する。(3) 針電極を並列に並べたのこぎり歯電極の場合、帯電ローラの約1/3、コロトロンの約1/140のオゾンに抑制できる。したがってオゾン低減の観点からは、のこぎり歯電極を帯電器へ適用するメリットがあると考えられる。