表題番号:1999A-849 日付:2002/02/25
研究課題戦国期畿内近国における流通政策と商品流通
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 松澤 徹
研究成果概要
 本特定課題研究の主な目的は、日本中世における商品流通の実態を追究することであった。とくに近江国をフィールドとして、戦国期の領主権力による流通政策と活発化する商品流通についての史料・文献を網羅的に収集し、検討を加えることに主眼を据えた。
 とくに、8月には滋賀県高島郡朽木村・安曇川町において現地調査を行い、安曇川上流部の針畑地区から安曇川中流部の朽木村市場地区にかけての材木の筏流しなどに関して聞き取り調査を実施した。その結果、朽木村の中で中世史料上に現れるいくつかの地名の現地比定を行い、また安曇川を流す筏の集積地であった琵琶湖岸の船だまりの位置や、その付近の近世から続く材木商の所在を確認した。今後の研究においても現地調査を続け、今年度研究の戦国期の商品流通という限られた視点を、中世・近世を通じた山林資源の用益・流通という視点に広げ、さらに検討していくつもりである。
 本研究を通じての成果として、収集した史料・文献を精読した結果、今後の研究における重要な視点が定まったことが挙げられる。その視点とは、中世の商人が、流通路上においていかにして安全に物資を運搬し、またどのようにして安定した商品の販売を可能としたかという問題、「流通保障」の問題について追究することである。中世の商品流通における流通保障とは、大きく二つに分類することができる。一つは、領主権力の流通政策がもった流通保障機能、もう一つは、中世商業自体の自律的展開の過程において形成された流通保障機能である。この二つの「流通保障」がどのように関わるのかを検討する作業を続けており、論文にまとめて発表する予定である。最終的には中世商業から近世商業(近世幕藩制的流通体制)への変化の過程を見通すこととなり、課題は大きいが、来年度はこの点をさらに追究していきたいと考えている。