表題番号:1999A-842 日付:2002/02/25
研究課題未入職者における就業動機-測定尺度の確立と職業決定・未決定との関連について-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 助手 安達 智子
研究成果概要
 職業に対する動機について、仕事に対する内発的・挑戦的な自己向上志向、仕事場面で他者を凌ぎ社会的名声を得ようとする上位志向、他者との人間関係を重要視する対人志向の3側面を念頭におき、検討を行った。調査・分析の対象者は(A)看護職者、(B)理科系男子学生、(C) 女子短大生。
 (A)では、看護職者を対象とした縦断的データを用いて、職業的発達の一指標である職位の推移により、仕事に対する動機がいかなる変容をみせるかを検討した。その結果、職位の上昇に関連するのは、仕事内容に対する内発的・挑戦的動機志向であることが明らかとなった。(B)では、将来の職業に対する動機が、大学選択動機や、大学入学後の適応とどの様に関連するのか検討した。得られた結果では、仕事を通して自己を向上させようという動機の強い者は、情報機器設備や授業内容といった大学の本来的機能に着目して進学先を選定すること、ならびに、大学の本来的機能を重要視した進学先の選定は、入学後の学業面における充実につながることが示された。(C)では、進路選択に対する効力感から就業動機、職業未決定へと到る因果モデルを構築し、女子短大生を対象にその妥当性について検証した。その結果、2年生では、自己向上志向動機と自己評価に対する効力感が、1年生では職業情報の収集に対する効力感が、職業未決定を規定することが明らかとなった。これらの結果から、職業選択場面に対して援助や介入を行う際に、職業に対する内発的動機や、自己評価に着目することの重要性が示唆された。
 以上、99年度は、職業に対する動機を未入職者、および、既に就業している勤労者に対して適用し、概ね仮説を支持する結果を得た。また、動機の中でも職業に対する興味・関心からもたらされる内発的動機が、適切な進路選択や職業的適応に肯定的な影響を及ぼすことが明らかになった。