表題番号:1999A-821 日付:2002/02/25
研究課題デアリング報告書以後のイギリス高等教育改革に関する調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 専任講師 沖 清豪
研究成果概要
 本研究は、日本における高等教育政策の変動、とりわけ国立大学の特別行政法人化が叫ばれる中で、先例とみなされていたイギリスにおける大学可威嚇の状況について、その最新の情報を収集し、分析することを目的としていた。具体的には、イギリス高等教育行政における「エージェンシー」なる組織について、資料を収集してその機能を明らかにすることを試みた。
 調査の結果、意外なことに、イギリス教育行政においては、エージェンシーではなく、非省庁型公共機関(NDPB)と呼ばれる形態を有する機関が実質的な機能を有していることが明らかとなった。日本でエージェンシーに関する議論が開始された当初、イギリスのエージェンシーを模倣したとの議論があったが、少なくとも教育政策、とりわけ高等教育政策に関する限り、本報道はミスリードであったことが判明した。NDPBはエージェンシーと比較して独立性が極めて弱く、実質的には省庁と変わりがない。教育の領域に関する限り、少なくともイギリスのエージェンシー制度を参照にした形での、独立行政法人化に関する議論は意味のあるものではない。イギリスにおいては大学とは勅許状を有する古いタイプの大学か、一九九二年法によって大学の地位を認められた旧ポリテクニクであって、日本で想定されている大学の独立行政法人化と比較して、はるかに独立性が強いことが指摘できる。
 なお、非省庁型行政機関としては、行政執行型NDPBである高等教育財政委員会(HEFCE)、継続教育財政委員会(FEFC)、大臣が保有している学生ローン会社、教員訓練エージェンシー(エージェンシーという名称がついているが、イギリスの定義によるエージェンシーではなく、NDPBである)が設置されている。