表題番号:1999A-815 日付:2002/02/25
研究課題内務省社会局官僚と社会行政の展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 大日方 純夫
研究成果概要
 社会局とは、第一次世界大戦後の社会問題の深刻化、社会運動の高まりに対応して設置された内務省の一部局であり、内務行政が社会行政に本格的に進出したことを明確に示す特徴的な機構であった。本研究では、この内務省社会局にあって社会事業の推進にあたった官僚たちを検討の俎上にのせ、官僚としての基本性格とその政策構想を探ることを課題とした。研究にあたっては、まず、基本史料の調査・収集を重点的にすすめ、国立国会図書館憲政資料室所蔵「大野緑一郎関係文書」、法政大学大原社会問題研究所所蔵「協調会文庫」などに含まれる社会局関係史料、とくに救貧法制の立法化に関係する基礎史料を調査・収集した(「救貧法問題資料」「救護法案」「救護法案資料」「救護法沿革資料」「公救護法案」「公救護法参考書」など)。また、山崎巌・灘尾弘吉などを中心とする社会事業官僚の著作の調査を実施し、著書をはじめ、『社会事業』『社会政策時報』『斯民』などの雑誌に掲載された論策を収集した。さらに、官僚たちの談話・回想類の収集にもつとめた。そのうえで、人事関係の資料にもとづいて社会局の全般的官僚配置をおさえつつ、収集史料に依拠して社会事業官僚の位置に検討を加え、その性格を探った。つづいて、山崎・灘尾という二人の官僚に注目して社会事業官僚の政策構想を探りつつ、1920年代半ばから30年代にかけての社会事業行政の展開方向を見通した。とくに山崎については、著書『救貧法制要義』に即して救護法にかけた社会事業行政の構想を検討し、西欧における救貧の理念・現実と、日本における救貧の伝統・現実をどのようにみていたのか、そして、いかなる救貧システムを導入しようとしたのかに分析を加えた。また、灘尾については、著書『社会事業行政』などを主たる素材としながら、戦時体制下の社会事業のあり方を展望した。