表題番号:1999A-594 日付:2002/06/05
研究課題国際関係からみた近代日本植民地法制度の形成と展開に関する構造的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) アジア太平洋センター 助手 浅野 豊美
研究成果概要
 近代日本の植民地支配の起源と展開について、国際関係的要因を中心として分析した。従来の研究では、帝国的膨張の起源と展開は、中心にある日本の社会構造的矛盾の発現としてのみ理解されていた。つまり、帝国の中心にある何らかの要因に従い、沖縄と北海道→台湾→南樺太→朝鮮→満洲→大東亜という順で同心円的膨張を行ったと位置付けられてきた。しかし、分析の結果、日本帝国の起源は、居留地制度という西欧国際システムと東アジア世界との境界面に作られた制度、特にその根本原理となっていた治外法権という慣行と深く結びついており、それを巧みに利用して帝国の内部の法秩序を作り上げていることがわかった。帝国の膨張の契機、そして帝国内政の構造も、少なくとも日本帝国の場合、東アジアの国際秩序、特に治外法権制度を抜きにしては、理解できない。
 第二に、帝国の統治の特徴である「同化政策」を法の下の平等と文化的同一化という二つの政策を組み合わせたものとして理解する従来の分析枠組みに対し問題点を指摘し、新たな枠組みを、文化と法制との関係を焦点に提示した。問題は、「個人」が存在していない旧慣世界の共同体社会から、日本人としての意識を有する「個人」を析出させるのが、同化政策の一般的目的であった点に着目すべきという点にあった。こここから、法の下の平等という観念を公法私法を区別しない一般的法制全体に投影してはならず、法制の構造は前述した国際関係的要因をも交えつつ、公法と私法を分けて、しかも法域ごとに論じていかねばならないことを主張した。