表題番号:1999A-588
日付:2004/03/05
研究課題液体構造関数に対する必要条件を考慮した変分法による非対称核物質の研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学総合研究センター | 助教授 | 鷹野 正利 |
- 研究成果概要
- スピンまたはアイソスピンが偏極したFermi粒子系における一粒子当りのエネルギーを求める新しい変分法の定式化を行った。これは近似的エネルギー表式を用いた変分法であり、一粒子当りのエネルギーを変分関数の汎関数としてexplicitに書き表す方法である。この方法の特徴は、スピン(アイソスピン)依存の液体構造関数に対して一般的に成り立つ、幾つかの必要条件が考慮されていて、変分計算の際にこれらの必要条件が自動的に満足されるように、エネルギー表式が作られている事である。これまでこの変分法は、スピンの偏極していない液体3Heや完全にスピン偏極した液体3He等を対象としていたが、今回はスピンの偏極度が任意の場合を取り扱えるように、理論を拡張した。スピンが任意に偏極した場合の液体構造関数に対する必要条件は、スピン偏極のない場合に比べて相当複雑になり、原理的に無限個の独立な必要条件が存在する。今回の研究では、それらの中で最も厳しい条件式に着目し、それらを用いた近似的エネルギー表式の作成に成功した。そしてその表式を用いた変分計算によってエネルギー値を求め、スピン偏極度と共にエネルギーがどのように変化するかを調べた。さらに核物質に対して理論を拡張し、スピンは偏極せず、代わりにアイソスピンが偏極する非対称核物質に対するエネルギー表式を作成した。現在は核力が2体の中心力である場合について理論を構築しているが、この場合について、陽子数、中性子数の比と共に、核物質のエネルギーがどのように変化するかを調べた。このエネルギー変化は、陽子数と中性子数の差の2次式で十分記述出来ると言われているが、本研究におけるpreliminaryな計算では、陽子数と中性子数の差の4次の項も無視できない結果が得られた。2体核力をより現実的なものにする等の改良によって、この4次の項の効果を詳しく調べる事が、今後の課題の一つである。