表題番号:1999A-578 日付:2002/02/25
研究課題表面電極筋電図のパルス密度復調処理法による上肢・下肢の動きの運動指令の推定
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 比企 静雄
研究成果概要
 表面電極筋電図からパルス密度復調処理法によって上肢・下肢の動きの運動指令を推定する可能性を検討した。それぞれの筋の収縮の程度の時間的な変化を制御するような運動指令が、中枢で意識されて、神経線維を通して筋に伝えられる。1本の神経線維は振幅と時間幅が一定のパルスを間歇的にしか伝えることができないが、多数が束になって筋にこの運動指令を伝える。筋では、神経線維につながる筋繊維群が、パルスを受けて収縮することによって、全体としての収縮の程度が中枢で意識されたように変化する。運動指令は、大脳では始めはオンオフパタンであるが、神経線維へのパルスの発生やシナプスでの中継などの閾値のばらつきのために、伝達の過程でくずれてアナログパタンになる。
 このように、ある筋への運動指令は神経線維の束の全部にまたがるパルス密度変調によって伝えられているから、これらのパルスが筋繊維に伝わるのを観測する筋電図を、パルス密度復調することによって、神経指令のアナログパタンを検出し、これからオンオフパタンを推定する。このためには、ある筋へ伝わるできるだけ多くの神経線維のパルスを記録できるように、電極の構造と配置を選んだ。また、それぞれの神経線維が筋に達する終板の位置と電極との距離の差によって、筋電図のパルスの振幅の差が生じるのを、できるだけ小さなものまで補正して整形した。走る動作の下脚の筋について、このようなパルス密度復調処理法を電子計算機プログラムで実行して、運動指令のアナログパタンを検出し、伝達の過程を逆算して始めのオンオフパタンを推定した。とくに、中枢からの運動指令と筋からの反射による成分とを分離して、関与する筋の相互の働きを解析するのに、筋電図のこのような処理法によって得られた精密な情報が、非常に役立つことが確かめられた。