表題番号:1999A-572 日付:2002/02/25
研究課題消化管運動調節機構に与る非神経非筋細胞の細胞組織学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 小室 輝昌
研究成果概要
 本研究では、消化管筋層に存在するカハールの介在細胞(ICC)の刺激伝達装置としての機能を解析すると共に、各器官組織層に分布するICCの細胞組織学的分類を行い総括した。
* ラット小腸深部筋神経叢の免疫組織化学的検索では、豊富な神経支配を受けている深部筋神経層のICC(ICC-DMP)はCx43抗体に陽性なgap junctionによって平滑筋と結合しており、gap juncitonを介した細胞網を通じて、刺激伝達機能の役割を担っているものと推定した。
* また、消化管のNANC抑制性神経として知られているNOニューロンのICC支配についての検索では、ラット小腸深部筋神経叢に沿ってNADPH-diaphorase組織化学に陽性の強い反応が観察された。同様に処理した標本の電子顕微鏡観察では、ICCに密接してシナップス小胞を含む反応陽性の終末が観察された。また凍結切片によるVIP免疫染色では、深部筋神経叢に一致して強い陽性反応が規則的に観察された。以上の観察から、ICCはNOニューロンの運動支配を受け、筋とのgap junctionを介して刺激を伝達するものと推定した。また同一ニューロンにおけるNOとVIPの混在の可能性についても考察した。
* 一方、消化管各部位、各組織層の違いによるICCの細胞学的特性を系統的に整理するため、従来の研究成果を補完する微細構造学的検索を行った。その結果、ラットおよびモルモットでは、胃、小腸、結腸を通して、筋層間神経叢部に線維芽細胞に類似したICC-APが認められたが、小腸深部筋神経叢部のICC-DMPと結腸筋層下神経叢部のICC-SMPにはカヴェオラや明瞭な基底膜が観察され、平滑筋に似た特徴が見られた。また、胃および結腸輪走筋層内のICC-CMでは、連続した基底膜は欠くもののカヴェオラは観察されるなど、両者の中間的な特徴が見られた。ICC-DMP,ICC-SMPは勿論、胃、結腸のICC-CMにおいても、平滑筋とgap junctionを形成し、神経終末と密接することから、神経信号のmediatorとして働くものと推定した。