表題番号:1999A-569 日付:2002/04/14
研究課題ネットワーク型産業の経済理論分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 土門 晃二
研究成果概要
 ネットワーク型産業では、ネットワークを接続する際に生じる費用の事業者間での負担問題が大きな論点となっている。この研究では、通信産業での接続料金問題について、市場構造の違いによる相違点を含めながら考察した。
 日米で争点となっている事業者の垂直統合および分離によって、既存企業の設定する新規企業に対する接続料金は変化する。一方で、市場構造の変化は、企業の組織自体に影響を与え、費用構造に変化をもたらすことは明らかである。そこで、そのような費用構造の変化を含め、どのような接続料金が設定されるのか、また社会的に見て最適な水準はどこにあるのかを理論的に考察した。
 得られた結果は、まず通常垂直分離によって生じる弊害である二重限界性(double marginalization)は、新規参入企業(長距離市場)が既存企業よりも効率的な費用関数も持つのであれば、経済公正的にさほど問題にはならないことである。ただし、その結果のためには、新規参入企業にある程度以上の効率的な費用関数が必要とされる。すなわち、単に効率的であるということだけでは支持し得ない。
 次に、接続料金の議論でよく引き合いに出されるECPR(Efficient component pricing rule)と、この研究で得られるラムゼー接続料金との相違点を明らかにした。ここで得られたラムゼー接続料金は、{ラムゼー接続料金=独占接続料金-接続料金上昇による限界的な利潤減少}であり、{ECPR=限界費用+接続サービスの機会費用}とは異なったものになる。また、補論では、より一般的なネットワーク接続モデルにおける上記の相違についても言及している。