表題番号:1999A-562 日付:2002/02/25
研究課題有用微生物の高機能化・高密度固定化技術を利用した写真廃液の生物処理システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 常田 聡
研究成果概要
 ロンドン条約附属書Iの改正に伴い、1995年末をもって写真廃液を含む産業廃棄物の海洋投棄処分が禁止された。写真廃液はハイドロキノンやカプラー、界面活性剤、EDTAなどの難生分解性物質を含むほか、無機塩類や有機性窒素化合物なども高濃度に含まれており、難分解性の廃液である。我々は写真廃液には硫酸塩を高濃度に含有していることに着目し、硫酸塩還元細菌を利用した難生分解性有機物除去プロセスの構築を目的として検討を行った。本研究では、写真廃液に含まれるFe-EDTAにターゲットを絞り、Fe-EDTA分解微生物群の獲得や硫酸塩還元細菌の分解寄与の確認、Fe-EDTA分解微生物群による分解過程での中間生成物の有無の確認を行った。
 Fe-EDTAを分解する硫酸塩還元細菌を探索するため、水田から汚泥を採取し、硫酸塩還元細菌選択培地に炭素源としてFe-EDTAが100mg-C/Lとなるように添加し、約6ヶ月間馴養を行った。その結果、Fe-EDTAの顕著な減少が見られ、約10日で濃度をゼロにまで低減することに成功した。ここで、Fe-EDTAの分解における硫酸塩還元細菌の寄与を確認するため、硫酸塩還元細菌の阻害剤およびメタン生成細菌の阻害剤をそれぞれ添加し、分解試験を行った。その結果、硫酸塩還元細菌の阻害剤であるモリブデン酸ナトリウムを2mM添加した場合のみFe-EDTAの減少が見られなかったことから、硫酸塩還元細菌によるFe-EDTA分解寄与が示唆された。さらに、Fe-EDTAを分解させる際、Yeast Extractが必要であること、および分解中間生成物を生成していることがそれぞれ明らかとなり、Fe-EDTAの分解に寄与する硫酸塩還元細菌は水素を電子供与体とする細菌である可能性が高いことが示唆された。