表題番号:1999A-555 日付:2002/02/25
研究課題多重結合量子ドットの集合的ドット間トンネルの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 竹内 淳
研究成果概要
 量子ドット間のキャリアのトンネル過程を時間分解フォトルミネッセンス法を用いて調べた。結合量子ドットのサンプル構造は、In0.9Al0.1As量子ドットとInAs量子ドットがGaAsバリア層を挟んだ構造であり、バリア幅を6nm、8nm、10nmと変化させた3種類からなる。この構造では、In0.9Al0.1As量子ドット内の電子は、よりエネルギーの低いInAsドットの基底準位に非共鳴トンネルする。測定の結果、量子井戸間のトンネルと同様に、ドット間のトンネル時間がWKB近似で記述できることが明らかになった。ただし、このトンネル時間は量子井戸間のトンネル時間よりも約一桁遅い。これは、非共鳴トンネルの主要な散乱過程であるフォノン散乱が抑制されているためと考えられる。次に、スピン偏極させた電子のドット間トンネルを調べた。その結果、結合量子ドットのInAlAsドット内でのスピン緩和時間は、バリア幅6nm、8nm、10nmのサンプルに対して1.6ns、1.6ns、1.8nsであり、トンネル時間(130ps、360ps、850ps)との間に強い相関はないことが明らかになった。スピン緩和時間がトンネル過程に強くは影響されないことから、トンネル時間が短ければ、スピン偏極を維持したまま電子の移動が可能であると考えられる。