表題番号:1999A-554 日付:2002/02/25
研究課題クエン酸生産機構の改変を目的としたシアン非感受性呼吸系酵素の遺伝子破壊
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 桐村 光太郎
研究成果概要
 クエン産生産糸状菌Aspergillus niger(クロコウジカビ)はミトコンドリア内に2つの呼吸経路を有している。1つは通常のチトクロム系であり、他方はシアンに非感受性でサリチルヒドロキサム酸(SHAM)に感受性の呼吸系である。チトクロム鎖の阻害剤であるアンチマイシンAを添加して培養すると、A. nigerの菌体量は減少するが、菌体量当たりのクエン酸生産量は増大した。一方、シアン非感受性呼吸経路の阻害剤であるSHAMを添加して培養すると、菌体量は変化しないにもかかわらずクエン酸生産量は著しく減少した。これらのことから、シアン非感受性呼吸系はクエン酸生産に大きく貢献する呼吸系であることを明らかにした。そこで、シアン非感受性呼吸系酵素の機能を遺伝子レベルで検討することを目的として、A. nigerにおけるシアン非感受性呼吸系が1つの酵素すなわちalternative oxidaseによって触媒されていることを明らかにした。当該酵素をコードする遺伝子をクローニングしてcDNAの塩基配列を決定し、352アミノ酸をコードする1257 bpの読み取り枠(ORF)の構造を明らかにした。当該遺伝子は、高等植物Sauromatum guttatum や酵母Hansenula anomala由来のものとはアミノ酸レベルでそれぞれ50%、52%の相同性を示す。当該遺伝子のORFを大腸菌用の発現ベクターpkk223-3にサブクローニングして大腸菌に導入すると、形質転換体はシアン非感受性でSHAMに感受性の呼吸を獲得した。さらに、遺伝子の相同組換えを利用してクエン酸生産糸状菌のalternative oxidase遺伝子を破壊したところ、当該遺伝子破壊株は親株と比較して、菌体増殖にはほとんど変化がないにもかかわらずクエン酸生産量が大きく減少することを明らかにした。