表題番号:1999A-550 日付:2002/02/25
研究課題共役高分子・フラーレン複合体を用いたフォトダイオードの開発と電子移動過程の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 古川 行夫
研究成果概要
 ポリ(3-ドデシルチオフェン)[PDT]とPDT/C60複合体の薄膜をスピンコート法により作製し、紫外・可視吸収スペクトル、赤外吸収スペクトルを測定し、電子状態と分子構造について検討した。また、けい光スペクトル、光誘起赤外吸収スペクトルを測定し、光照射に伴う電子移動過程を研究した。PDT/C60複合体の紫外・可視吸収スペクトルと赤外吸収スペクトルは、それぞれ、PDTとC60のスペクトルの重ね合わせとなっており、基底状態では相互作用はないことがわかった。PDTの電子吸収帯内に位置する波長のレーザー光を照射すると、PDT、PDT/C60複合体共に赤外吸収に新しいバンドを示した。これらのバンドはPDTのキャリヤー(ポーラロン)に帰属された。したがって、光照射によりキャリヤーが生成することがわかった。PDT/C60複合体の光誘起赤外吸収の強度は、PDTの場合よりも10倍以上、強かった。この結果は、C60を混合することにより、キャリヤーの生成効率が上昇することを示している。また、PDTの電子吸収帯の種々の波長を励起光として、光誘起赤外吸収強度のアクションスペクトルを測定した。PDTでは、PDTの電子吸収帯がある範囲では、光誘起赤外吸収強度は弱く、それよりも短波長側で強くなった。これは、可視吸収帯がエキシトンによるもので、バンドギャップは吸収よりも短波長側に位置していると考えることにより説明できる。一方、PDT/C60複合体では、PDTの電子吸収帯内に位置する光で光誘起赤外吸収の強度は強かった。また、PDTにC60を混合することにより、けい光強度は著しく減少する。これらの実験結果は、PDTのエキシトン経由で電子移動が起こり、PDTポリマー鎖に正キャリヤーが生成し、同時にC60アニオンラジカルが生成したと考えられる。また、PDT/C60複合体では可視光でキャリヤーの発生効率が高いので、太陽電池の材料として有望である。