表題番号:1999A-543 日付:2004/11/25
研究課題抗体量を自動的・連続的に測定する高感度免疫センサの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 酒井 清孝
研究成果概要
 固定化触媒によって任意の場所で発光可能なルミノール化学発光法を利用して、水溶液中のタンパク質モニタリングシステムを開発した。ルミノールなどの化学発光物質は、過酸化水素の分解で生じるヒドロキシラジカルによって励起される。化学発光では、発光物質、過酸化水素、過酸化水素を分解する触媒を混合して発光させるため、溶液の混合状態によって発光が影響を受けるという問題がある。そこで、特定の場所で電位を印加し、任意に発光させることのできる電気化学発光法が開発されたことによって、化学発光を制御しやすくなった。しかし、電位印加装置が必要であるため装置系が大きくなり、またコストもかかる。そこで、固定化触媒を用いることによって、混合状態の影響を受けにくく、電気化学発光法よりもシンプルな測定系を開発した。
 電位印加に用いていた白金板は、それ自体が過酸化水素を分解する触媒であり、電位を印加しなくてもルミノールを発光させることができる。反応装置を至適設計することによって、電位が印加されなくても安定して十分なルミノール化学発光が得られる白金板内蔵型フローセルを開発した。このフローセルを用いて、ルミノール濃度に対する発光強度の依存性を検討した。さらに、均一系化学発光免疫測定法にこのフローセルを用い、ヒト血清アルブミン(HSA)を測定対象とし、ルミノール標識した抗HAS抗体を試薬として用いて、その応答性を検討した。
 結果として、白金板内蔵型フローセルを組み込んだ測定装置を用いてルミノールの良好な検量線が得られた。さらに、この測定系を用いた化学発光免疫測定法では、HSA濃度が大きくなると、試薬であるルミノール標識抗HSA抗体の発光強度が増大するという結果が得られた。
 結論として、過酸化水素存在下および本研究のフローセル内で、白金板はルミノール化学発光を測定系に応用可能な程度、強く、安定に発光させることができることが示された。