表題番号:1999A-541 日付:2004/11/18
研究課題新しいディジタル・インコヒーレントホログラムの提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 小松 進一
研究成果概要
 インコヒーレント照明下の3次元物体を記録・再生するための新しい方法を提案した。本方法は、従来のホログラフィーとは全く異なる独創的な原理に基づいており、固定焦点光学系で撮影した1枚の劣化像から、そこに含まれる複数の物体までの距離を推定するとともに、デコンボリューションによって各物体の鮮明な原画像を復元し、3次元物体空間を再構成するものである。1枚のCCD画像から3次元情報を抽出する本方法は汎用性に富んでおり、立体像の記録・再生に関する新しい研究分野を開拓し、内視鏡や顕微鏡などを利用するいろいろな分野にも新しい展開と成果をもたらすことが期待できる。
 本方法では、焦点ずれによる劣化像をデコンボリューションフィルター群に入力し、各要素フィルターからの出力画像に含まれる負値の総和を評価量とし、これが極小となる要素フィルターを見つけることによって物体距離を推定する。このことが可能であることは、我々によって、計算機シミュレーションと冷却CCDを用いた光学実験の両方からすでに確認されている。
 本研究では、まずこの原理をビデオ内視鏡や生物顕微鏡の3次元像構成に利用するための光学系を提案した。一般に内視鏡診断は患者の苦痛を伴うため、なるべく短時間での撮像が望まれる。本方法によれば、焦点が少しずれた劣化画像からでも鮮明な物体を再生できるため、焦点合わせに要する時間を短縮し、全体の撮像時間を短くできる。
 次に、通常のCCDでは撮像不可能な極微弱照明光下で得られたフォトン画像を対象として、本方法の適用領域の拡大を図り、その有効性を調べた。黄色LEDにピンホールを取り付けた点光源とVIMカメラヘッドを搭載したフォトンカウンティングカメラを用いて実験を行い、実際に物体距離推定が可能であり、良好な回復像が得られることを確認した。この実験で用いた1画素あたりのフォトン数の最大値は479個であった。撮像に要するフォトン数の下限の確認と、限界以下での回復を可能にするアルゴリズムの開発が今後の課題である。