表題番号:1999A-536 日付:2002/02/25
研究課題進化分子工学を利用した新規戦略に基づく制限酵素の耐熱化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 宇佐美 昭次
研究成果概要
 遺伝子工学を利用したタンパク質の機能改変は広く行われており、温度安定性や基質特異性の改良にも既に多くの実例がある。しかし、DNA関連の酵素に関する知見は少なく、とくに制限酵素に関しては耐熱化が実現された例はない。これは、自己の生体防御機能としての制限修飾系が異種DNAを排除する役割を果たすことから、細胞の基本的機構であるがゆえに改変が困難なことを意味するものかもしれない。本研究においては、新規な方法として進化分子工学を利用して、制限酵素の機能改変を行うことを目的とする。とくに、部分的なアミノ酸置換などの「小さな進化」とドメインあるいは機能領域の大幅な改変などの「大きな進化」を自由に組み合わせて、従来は不可能であった制限酵素の改良を実現したことに大きな意義がある。本研究においてモデル酵素としてはBamHIを使用した。当該酵素は6塩基認識で遺伝子工学の試薬として広く一般に使用されているが、たとえば60度、5分間の放置で活性がほとんど消失する。そこで、当該酵素をコードする遺伝子の塩基配列をもとにしてしてコンピュータシミュレーションによる人工進化を行い、宿主による制約や選択圧から開放された系での改良を試みた。とくに、耐熱化を目標とした研究においては、41P、 E101W、 I136P、などの変異導入とこれらの組み合わせによって、耐熱性が向上した改変型BamHIを生成かつ選択することが可能であった。