表題番号:1999A-531 日付:2002/02/25
研究課題オーステナイト鋼の加工誘起変態を活用した磁気記録材の創質・創形
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 浅川 基男
研究成果概要
 精密機械、産業用ロボット、自動車、鉄道車両、建設機械等では、空圧や油圧を利用した位置検出用アクチュエータが多く採用されている。従来のピストンロッドの位置検出法としては、ロータリーエンコーダ等をシリンダ外部に装着する方法や、ロッドに等間隔の溝を設け、銅等の磁性の異なる金属でその溝を埋め磁性部と非磁性部を交互に配列し、磁気センサで検知する方法が実用化されている。しかし、いずれの方法も検出精度や堅牢さに問題を抱えていた。そこで、この磁気特性を利用した方法として、オーステナイト鋼のひずみ誘起変態を利用した方法が実用化されている。すなわち冷間加工によりロッドをマルテンサイト化(磁性化)した後、レーザを一定間隔で加熱照射し再びオーステナイト化(非磁性化)する方法である。しかしレーザ加工は生産性が低く高価なため、特殊な用途に限られていた。そこでレーザ加工法に代わり、圧印機による塑性加工法でマルテンサイト化する磁気記録法を開発し、レーザ加工に比べ格段に生産性の高い加工法を検討した。本年度の研究では、さらに回転加工法を考案し波形の安定化を図った。また表層溶体化処理により、内部にマルテンサイトを残し、ロッドの高強度化を図った。
 この結果以下の成果を得た。
 回転加工の局部加工によって、圧印法に比べ安定した高出力のセンサ波形を取得することができた。磁気の波形が最も明確に検知できる加工条件は、工具頂角45°、目盛り深さ0.15mm、ピッチ2mmの場合である。
内部マルテンサイトにより、ロッドの引張り強度は750MPaから1000MPaに、また耐力値は230MPaから700MPaに増加し、高強度化できた。また表層のみをオーステナイト化するための最適な高周波処理条件は、φ17ロッド使用時において、出力108kW、周波数30kHz、コイル移動速度8~14mm/secである。
 以上より、塑性加工によるオーステナイト鋼のひずみ誘起変態を利用し適切な条件で回転加工を施すことにより、レーザ加工法に近い安定した波形を得ることができ、従来システムと同等の0.1mm単位の位置検出精度を実現した。また内部マルテンサイト化により、ロッドの機械的性質を改善することができ、生産性の高い塑性加工による磁気目盛りの作成が可能である。