表題番号:1999A-518 日付:2002/02/25
研究課題大陸衝突帯の超高圧変成岩から読み取る地球内部物質循環の情報
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 小笠原 義秀
研究成果概要
 古生代初期の大陸衝突帯であるカザフ共和国コクチェタフ超高圧変成帯に産出する変成炭酸岩を用いて、大陸起源物質の深部沈み込みとその過程でおこる物質の進化過程およびそこに関わる流体の役割の解明を念頭に、岩石学的・鉱物学的・同位体地球化学的研究を行った。2年間の研究成果として以下のことが明らかになった。
1.コクチェタフ超高圧変成帯には、ダイアモンドを含むドロマイトマーブル(a)、ダイアモンドを含まないドロミティックマーブル(b)、コース石の離溶組織をもつチタン石を含む方解石マーブル(c)の、3つの超高圧マーブルが産出する。これらは、表層不純炭酸塩岩の深部沈みこみの産物であり、いずれも同一条件の変成作用を受けている。それぞれが固有の地球深部情報をもっていることがわかった。また、一連の変成岩岩石学的研究からこれらの岩石は圧力数GPaあるいはそれ以上の条件におかれていたことが確実であり、表層物質が深さ200Kmあるいはそれ以上まで沈みこんだことの直接的な証拠である。
2.ドロマイトマーブル(a)とドロミティックマーブル(b)の鉱物組み合わせの違いは超高圧変成作用下の流体組成特にXCO2環境の相違で説明される。いずれもH2O-rich環境で安定であるが、(b)は(a)に比べて著しくXCO2が低い条件下で形成されたものであり、また、(b)におけるダイアモンドの欠如もこのことで説明できることがわかった。
3.放射光を用いたマイクロラウエ法X線回折とレーザーラマン分光の結果から、ドロマイトマーブル中のマイクロダイアモンドは2つのステージで成長していることが明らかになった。最初のステージでは石墨からの転移でダイアモンドが生成した可能性が高い。またそれを核としてより微小な半自形ダイアモンドが異なった方位で成長している。このダイアモンドは超高圧条件下で変成流体から成長した可能性が濃厚である。
4.同位体地球化学的研究から、(b)のドロミティックマーブルは超高圧条件下で外来の流体(特にH2Oに富む)による強い交代作用をこうむっていることが分かった。このことは、超高圧変成作用下においてH2O-rich流体の存在を示唆するだけでなく、沈み込んだ物質が流体成分に対して開放系であることの証拠ともなると解釈できる。