表題番号:1999A-516 日付:2002/02/25
研究課題元炭砿労働者の閉山離職後におけるキャリア再形成の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 正岡 寛司
研究成果概要
 本研究の目的は、福島県常磐炭砿磐城砿業所を昭和46年4月に閉山離職した4700名余の男性砿員を追跡調査し、閉山後の人生史を記述し、新たな職業生活への移行の難易を決めた要因を明らかにすることにある。そのために閉山時の社内資料の収集と分析、現住所の追跡作業、面接調査の実施を平行して行った。われわれは閉山時離職者リストを,主として福島大学に所蔵されている社内資料を手がかりに再構成し、男性砿員についてはほぼその全数に及ぶ氏名や属性のリストを確定するにいたった。同時に彼らの所在を電話帳などによって確認し、現時点までに9割を越える離職者の住所を確認した(死亡者を含む)。このうちいわき市に在住する大正10年から昭和10年に生まれた者に対して、対象者に面接調査を実施し、約600名から回答を得た。平成11年および同12年度には、離職後に全国に離散した元炭砿労働者に対して郵送による調査を実施した。その結果は現在解析中である。
 本研究の現時点における、最新の成果は報告書「炭砿労働者の閉山離職と職業キャリアの再形成III」にまとめられている。以下は面接調査から得た知見の一部である。
・ 再就職先は、閉山から1以内に9割の者が決まっており、臨時職など不安定な地位の職に就いた者はわずかに過ぎない。
・ 再就職先での収入は、閉山時に得ていた収入と比較して減った者が多い。
・閉山後再就職先での勤続年数は、常磐興産株式会社の関連会社(西部炭砿を除く)や出資会社に就職した者の方が比較的長い。
・新会社、西部炭砿に就職した者は短期間に新たな仕事に就いたが、同社の閉山による(昭和50年)離職者には再就職までに比較的長い時間を要した者が多い。
・閉山後1職ないし2職の仕事に就いた者が全体の8割を占めるが、職数の多い者には比較的後に就いた仕事で就業期間が長い傾向がある。
・職業キャリアからの離脱年齢の分布には、閉山時年齢や再就職先による違いはみとめられない。
・閉山後の職業キャリアを通じて、臨時・日雇い職を経験しない者が6割に及ぶ。