表題番号:1999A-510 日付:2002/02/25
研究課題フランス株式会社法における業務執行機構の形成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 鳥山 恭一
研究成果概要
 本研究は、株式会社の業務執行機構の変遷を、フランス法を素材にして実証的に明らかにすることを目的としている。近年、各国において「コーポレート・ガヴァナンス」が盛んに論じられており、株式会社企業の経営機構のあり方がそこで問題にされている。そのため、フランスでなされている「コーポレート・ガヴァナンス」の議論を検討することを通して、フランスの特色を浮きぼりにするという作業も行ない、その研究成果を、1999年度に「フランス会社法とコーポレート・ガヴァナンス論」として公表した。
 フランスでは1966年の商事会社法改正以来、株式会社の業務執行機構に関して、いわゆる一層制と二層制の二つの機構が認められているが、現在でも、ほとんどの会社は、単一の合議機関からなる一層制の機構を採用している。そのような一層制の機構では、取締役会が監督するべき会社の業務執行は取締役会の会長が行なうものとされている。すなわち、一層制の機構においては、業務執行と監督は制度上分離しておらず、取締役会による業務執行の監督は、自らの構成員に対する監督であるという自己監督の矛盾を抱えている。この点は、わが国の取締役会による監督(商法260条1項)でも同様である。
 ただし、フランスでは、取締役会による監督とは別に、「監査役(commissaire)」による監督の制度が強化されてきている。この点にフランスの特色があると上の論文では指摘し、さらに、そのような観点から、1999年度に公表した「監査制度のゆくえ」において、わが国の制度も含めて株式会社の機関構成を検討した。
 アメリカあるいはドイツでは、株式会社において会社業務の執行と監督を分離させることによって、業務執行の監督に実効性をもたせようとしている。フランスでも、近年の「コーポレート・ガヴァナンス」の議論においてそうした分離の必要性が指摘される場合もあった。そして、現在フランスでは、国会において、そうした業務執行と監督の分離を制度上可能にするための会社法改正作業が進められており、近く、改正法律案が採択される見通しである。それゆえ、近く実現する見通しの会社法改正の内容の検討を踏まえたうえで、本研究を完了させ、その成果を公表したい。