表題番号:1999A-502 日付:2003/03/27
研究課題廃棄物循環分析用IO表の推定とゼロエミッション化の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 中村 愼一郎
研究成果概要
 財の生産と消費は不可避的に廃棄物を発生させる。静脈部門で適正処理・処分を経た廃棄物は、最終的に「環境負荷因子」として環境に放出される。静脈部門はその活動のために動脈部門からの財投入を必要とするが、一方で、それ自身廃棄物を発生させる。又、廃棄物再資源化は静脈から動脈への財供給である。動脈部門と静脈部門との間の財と廃棄物の循環を巡る、投入・産出・排出・処理・処分の相互依存関係を数量的に把握する分析装置として「廃棄物産業連関勘定及びモデル」を開発した。廃棄物産業連関の概念を既存研究との関連も含めて明確にし、理論的展開方向をで示した。全国表の推定作業を通じて各種統計資料からの廃棄物産業連関表の推定方法のマニュアル化を行い、Excelをインターフェースとして用いる廃棄物産業連関モデルのMATLABシステムを開発している。
平成7年度の我が国公表産業連関表等を用いて、60産業部門、24種類の廃棄物、及び破砕・焼却から溶融・埋立までの廃棄物処理・処分部門からなる全国規模の廃棄物産業連関表モデルを推定した。応用として、広域化による集中処理・ごみ発電、廃プラスチックの高炉還元利用等が、産業生産活動・最終処分量・二酸化炭素排出量に及ぼす効果を評価検討した
持続的経済社会の実現を目指す廃棄物管理政策にあっては、動脈と静脈の連関を考慮した全体的な環境負荷軽減を計ることが必要である。廃棄物産業連関は、中村者がこの目的に資するために独自に開発した物で、廃棄物発生のみならず廃棄物変換過程としての廃棄物処理と再資源化・処理に伴う動脈との連関を明示的に扱っている点、及び廃棄物処理に関して工学的モデルを入れ子の形で用いている点において、類似研究であるレオンチェフの公害除去産業連関モデル(及びその発展型)やSNAに基づく環境・経済統合勘定NAMEAと比較して大きな特色がある。