表題番号:1999A-501 日付:2002/02/25
研究課題20世紀におけるアジアの意味―ガンジー・毛沢東・ホーチミン―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 坪井 善明
研究成果概要
 20世紀はアジアにとっては欧米列強の植民地からの民族解放・独立国家樹立をめざす世紀であった。その中で、特にインドのガンジー、中国の毛沢東、ヴェトナムのホーチミンを取り上げた。というのも、この3人の指導者は単に祖国の植民地解放のリーダーだっただけでなく、世界の被抑圧に苦しむ多くの人々にとって、その思想、その視点の置き方、その活動方法などで、示唆に富む教えを含んだ文字通りの世界的なリーダーの役割をになったからである。そして、かれらの思想と行動は、彼等が生まれ育ったアジアの地の伝統に根付いて形成されたのである。その点で『20世紀におけるアジアの意味』を代表する人物である。
 ガンジーでは「非暴力」について詳しく論じられる。ヒンドゥー教の中のバクチの思想から由来していること、具体的に圧倒的な軍事力を有するイギリスの植民地権力に対して「暴力」を対置するより「非暴力運動」の方が、現実的に実効があったことなど、思想史や政治史の観点からも論じられる。殊に、インドに直接に研究出張した時の、研究者やガンジーと運動を共にした人へのインタビューで得た知見も加えられている。毛沢東は「農民主体の革命」のオリジナリティに焦点が当てられている。当時の中国の9割以上をしめていた農民を革命に参画させない限り、中国革命は成就しないと思い定めた毛沢東はマルクス・レーニン主義の正統から見れば異端な運動を繰り広げる。長征を行った根拠地は延安にも足を運んで資料収集と中国人研究者との討論の成果も取り入れられている。ホーチミンは『小国の大国に対する闘い』の側面に重点が置かれている。ヴェトナム戦争で大国アメリカに勝利したことによって、少数者の異議申立ての運動が世界各地で繰り広げられることになったのである。公民権運動、ウーマン・リブ、先住民族、ホモセクシャルなど多様な少数者が声をあげたのである。
 この研究成果は、2002年1月『早稲田大学アジア太平洋研究選書』の一冊として、早稲田大学出版部より刊行予定である。