表題番号:1999A-260 日付:2012/04/11
研究課題語学学習におけるリピーティングとシャドーイングの機構の解析-虚再認パラダイムを用いて-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 専任講師 西村 昭治
研究成果概要
目的
本研究の目的は、通訳養成機関で広く活用されていながらも音真似で終始するのではないか、とその意味処理のおいて疑問が投げ掛けられているリピーティングとシャドーイングを検証することにある。当初は、分析手段として虚再認パラダイムの活用を予定していたが文章素材への適用は困難であるため、今回は記憶研究における系列位置効果の観点から検討を加えることにした。
方法
2×2×2×3混合計画。第一要因は学習方略(リピ、シャ)、第ニ要因は文としての意味の有無(文章素材、文章の単語を並びかえたランダム素材)、第三要因は英語力(上位、下位)、第4要因は系列位置(前、中、後部位)。被験者は大学生72名。実験素材は英語の心理学の教科書から選択し、そのまま文章素材とした。ランダム素材はその文章の単語を無作為に並びかえた。それらはSONY TCD-D10によりデジタル録音され、LL教室において実験時用いられた。
結果と考察
統計的処理の後、全体としてリピーティング/シャドーイング共にランダム素材より文章素材で再生率が高くなったことが確認された。さらに上位/下位群に分けると、リピーティングにおいては以下のようなことが確認された。文章素材において、上位/下位群ともに前部位での再生率が高かった。その理由としては、前部位に多くみられる主語動詞をキーワードとして捉えようとした可能性が考えられる。しかし下位群では前部位のみ再生率が高く他部位では低いことから、キーワードの把握というよりも、ただ時系列に沿った記憶だった可能性も考えられる。
シャドーイングにおいては以下のようなことが確認された。上位/下位群とも、総じてランダム素材より文章素材において再生率が高くなった。また、文章素材/上位群において、系列位置が進むにつれ再生率の上昇が確認された。これは上位群は次に続く単語をある程度予測しながらシャドーイングを行っていると考えられる。文章素材/下位群においては中部位での再生率が低くなった。これはシャドーイングのスピードの遅れてしまうことが影響していると考えられる。