表題番号:1999A-258 日付:2002/02/25
研究課題交感神経亢進時の入眠過程と事象関連脳電位に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山崎 勝男
研究成果概要
 睡眠の発現機構に関してBorbélyが提唱した2過程モデルによると、睡眠発現には恒常性維持の側面を示すSプロセス(sleep-dependent process)とサーカディアンリズム振動を示すCプロセス(sleep-independent circadian process)が関与する。睡眠の発現には、生体の恒常性維持機能や生体リズムが強く関係しており、他にも外環境や身体状態などの関与が指摘されている。本研究では実験計画および環境制御によって、入眠の促進あるいは妨害要因と考えられている (a)入眠前覚醒の時間的長さと質(Sプロセス)、(b)前夜の睡眠の時間的長さと質(Sプロセス)、(c)サーカディアンリズムの位相(Cプロセス)、(d)騒音や高すぎる温度など外環境からの刺激、(e)痛みや痒みなど身体内部からの刺激、(f)脳の活動性のうち(a)~(e)を可能なかぎり統制し、(f)要因と入眠過程との関係を検討した。
 健康な大学生7名を対象に、入眠許可前の40min、高照度光(2500 lx)を照射するBL(bright light)条件と室内灯下(10 lx)で過ごさせるDL(dim light)条件を実施し、両条件の入眠期脳波を分析した。その結果、BL条件において入眠期の潜時は延長し、入眠過程が阻害された。若年層に多い入眠困難を主訴とする精神生理性不眠の病態の一部には、交感神経系の活動レベルの上昇と、それにともなう脳の興奮状態の関与が従来から考えられてきた。本研究によって、入眠過程は脳の活動性に強く影響を受け、脳の興奮状態は円滑な入眠阻害因となることを実験的に検証した。若年層の入眠困難という現象は、明瞭なθ波優位となる時期以前に問題があり、今後はこの時期に焦点を絞った研究を展開したい。