表題番号:1999A-255 日付:2002/02/25
研究課題シャイネスの変容に対する自己教示訓練の効果とその効果に及ぼす反応パターンの影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 根建 金男
研究成果概要
 本研究の目的は、大学生のシャイネスに対する自己教示訓練(以下SIT)の効果を検討するとともに、cognitive reactors(生理的には安定しているが、非理性的な者;以下CR)であるか、physiological reactors(理性的だが、生理的に不安定な者;以下PR)であるかの別によって、効果が異なるかどうかを、シャイネスの認知、感情、行動の側面から検討することであった。設定された仮説は、①SIT条件は統制(waiting list control;以下WLC)条件よりもシャイネスの改善に有効である、②同じくシャイネスでありながらも、CRである場合の方がPRである場合よりも、主に認知の変容に焦点が当てられているSITの効果が大きい、ということであった。被験者は、シャイネスを示す大学生であり、心理テストのスコアと、課題(初対面の異性との会話)場面期と安静期の心拍数の差によって、CRとPRに分類された。これらの者は、さらに、SIT条件(初対面の異性との会話場面において、シャイネスをコントロールできるようにするために適切なことばを自分に言いきかせる訓練を行う)、あるいはWLC条件(特別な訓練を行わない)にランダムに振り分けられた。結局、CR-SIT、CR-WLC、PR-SIT、PR-WLCの4群が設けられた。いずれの群でも、トリートメント(SITまたはWLC)の前(プリテスト)と後(ポストテスト)に、初対面の異性との会話場面(先述の、CRとPRを分類するためのものとは別)が設けられ、その際のシャイネスが測定された。結果として、SITはWLCと比較して、シャイネスの認知的側面と感情的側面を改善させ、SITの有効性が確認された。したがって、仮説①は検証されたといえる。しかし、特性シャイネスの認知的側面については、PR-SIT群で改善したのに対して、CR-SIT群では改善しなかった。一方、シャイネスの行動的側面(アイコンタクト、顔の表情などの項目を評定)では、ほとんどの項目で、CR-SIT群ではCR-WLC群よりも、またPR-SIT群ではPR-WLC群よりも、良好な結果であった。そして、どちらかといえば、CR-SIT群よりもPR-SIT群における結果が優っていた。要するに、仮説①はむしろ検証されなかったといえる。ただし、これについては、被験者を各群に振り分ける際の基準の厳密さや各群のサンプル数に若干の難点があったためとも考えられるので、今後念のために、追加の実験を行う予定である。なお、シャイネスの行動的側面においても、SITの効果がCRよりもPRの者で優っていたことについては、さらに検討を重ねる必要があるだろう。