表題番号:1999A-254 日付:2006/10/12
研究課題親による子供の排泄物への感情と行動の発達的変化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 根ケ山 光一
研究成果概要
 親子の分離過程を離乳期における子どもの身体性への親の感情の変化という側面から検討することを目的として、4歳未満の乳幼児の母親・父親(276名)に対し、親による子どもの排泄物などの身体性刺激に対する快・不快感情の強度や彼らの育児観などを質問紙によって尋ねた。その結果、子どもの身体から排出されるさまざまな老廃物は、とくに3歳になると親からはっきりと嫌悪されること、また大便だけは早くも0歳と1歳以降との間に嫌悪感の顕著な増加が見られることなどが明らかとなり、親子の心理的分離がそのような節目を経て段階的に進行するとともに、親によるこれらの嫌悪感情が離乳と関連するものであることが示唆された。そのような嫌悪感のあり方はおおむね親の性別を超えて共通であったが、なかには差の見られる部分があり、差があったものの中では一貫して父親がより嫌悪的であった。大便への不快と養育行動の頻度との間には、母親には有意な対応が見られなかったが、父親の場合、おむつ換え・寝かしつけ・授乳を多数回行う者にはその嫌悪感が少ないという結果が得られた。
 また因子分析によって親の育児観の構造を明らかにし、それと大便への嫌悪感との対応を調べたところ、父親の場合は献身性の因子、母親の場合は一体感の因子において、それぞれ有意な負の相関が得られ、子どもの身体性に対する関与の特徴には親の性による差が存在することが明らかにされた。一方、子どもの性別はこの年齢段階では親の嫌悪感にほとんど差をもたらさなかった。さらに、家庭において1歳過ぎまでの子ども(0,1か月齢,6,7か月齢,12,13か月齢あわせて42人,横断的研究)の日常育児場面をビデオにより撮影し、その中にみられる子どもの排泄物処理、すなわち「おむつ換え」時の母親の行動を分析することによって、親における子どもの身体産生物への感情の発達的変化を実際の生活の中で確認した。