表題番号:1999A-253 日付:2002/02/25
研究課題香港龍船競漕の国際化過程
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 寒川 恒夫
研究成果概要
 龍船競漕は長狭船に龍頭と龍尾を装着し、全体を龍にみたてて川や湖を競い走るもので、中国では古くから旧暦5月5日の端午の行事として揚子江以南の水稲耕作地帯を中心におこなわれてきた民族スポーツである。香港でも、スタンレー、ウエストポイント、アバディーンなど諸所で伝承されてきたが、1991年に香港の組織化が達成される。この年の6月13日に香港観光協会Hong Kong Tourist Association(HKTA)が主導する形で香港龍船協会Hong Kong Dragon Boat Association (HKDBA)が設立されたのである。協会設立が観光協会によって導かれたことは、このスポーツのその後の発展の質を論じる上で重要となる。即ち、HKTAは既に1976年に香港龍船祭―国際レース―を主催し、そのレース大会が香港と世界とに対し与えた反響の大きさの経済上の意味を十分に認識していたのである。事実、龍船クラブがこのレース大会を契機にして欧米とアジアに筍生したのである。これを受けてHKTAは、まず香港の統括団体を組織し、これをテコに国際組織創設を企画し、そこで1991年6月13日にHKDBA、つづいて同年に国際龍船協会International Dragon Boat Association(IDBA)が生まれることになった。IDBA設立には、香港龍船協会が中心となり、これにオーストラリア、フィリピン、中国、台湾、マレーシア、シンガポール、イタリア、ノルウェイ、アメリカ、イギリスの10ヶ国の各国龍船協会が参加している。IDBAの本部が香港に、しかもHKTA内に置かれた事実は、龍船競漕の国際化に寄せるHKTAの期待の大きさと、そして、この民族スポーツの国際化が観光化という「伝統文化の新しいサバイバル戦略」の流れに乗った営みであったことを示唆している。