表題番号:1999A-247
日付:2002/02/25
研究課題産業および消費構造がアジアの環境問題に与える影響に関する実証的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学部 | 助教授 | 鷲津 明由 |
- 研究成果概要
- 本課題において行った研究の内容は
1.中国の省別産業別環境分析
2.日本の家計消費活動における環境分析(環境家計簿の作成)
3.東アジア地域の環境分析の3つである。これら各項目について研究は同時進行的に行っており、また2000年度以降もこれらの研究は続けられる予定である。各項目に関する1999年度の研究進捗状況は以下の通りである。
1.中国の環境分析については中国の省別、産業別エネルギー消費量、CO2排出量、SO2排出量の推計方法を開発した。推計に際しては中国の主力エネルギーである石炭の消費状況および石炭起源の汚染物質について、日本で蓄積されている中国の各地域産石炭の性状データを分析する等、特に注意を払った。推計結果を見ると、中国では繊維、食料品などの軽工業による汚染物質の発生が、重工業によるものと同じくらい重大であることがわかった。今後はこのデータを用いて、新技術導入による中国の環境改善効果などを分析することが目標であるが、その手始めとして、石炭火力発電の方法として中期的に重要と考えられている諸技術について情報を収集し、それらにかかる費用とCO2削減効果について考察した。さらに現在の中国で特に問題視されているSO2の削減対策について、どのような方策が現在検討されているかについても情報収集した。しかし集まったデータは工学的なものであるため、これを経済分析に活用するための方法を現在検討している。
2.日本の家計消費活動における環境分析は、家計調査や全国消費実態調査で把握されている家計の属性別(世帯主の年齢別、所得階級別、居住地域別、居住形態別など)消費パターンの違いが、各家計がもたらす環境負荷の大きさ(CO2排出量)にどのような影響を与えているかを詳しく分析することである。家計がもたらす環境負荷には、灯油、ガソリンなどの消費による直接的負荷のほかに、消費財が生産されるときにもたらされる間接的負荷をも考慮する必要がある。後者の負荷は産業連関モデルによる誘発分析を応用することによって知ることができる。現段階では、1985年、90年についてこれらの分析を行い結果の比較などを行っている。また家計調査の時系列データの整理、ゼロエネルギー住宅などの普及によるマクロ的環境影響の推計などの研究にも着手し、情報収集等を行っている。
3.東アジア地域の環境分析については、ASEAN諸国、韓国、台湾などアジアの主要国におけるエネルギー消費の状況やCO2、SO2の排出状況について、各方面でまとめられているマクロデータを整理し、経済発展が環境問題に与える影響について考察する。現在は、集められたデータの解析を行う一方、データの精度について確認作業中である。