表題番号:1999A-239 日付:2002/02/25
研究課題障害者地域生活支援システムの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 成富 正信
研究成果概要
 本研究は、より有効な障害者地域生活支援システムを構築するための諸条件を明らかにすることを目的としている。障害者地域生活支援システムとは、地域に存在する多様な資源を活用して、障害者の個性的で継続的な地域生活を可能にするための総合的な援助システムである。だがそれは制度として最初から計画的に構想されたわけではなく、各地域に密着した独自な試行錯誤的実践の中から、理念も有効な資源も作り出されてきたという歴史があり、地域の特性に応じた多様な展開が見られる。
 そこで本研究では、まずこの分野での先駆的事例(滋賀の「レガート」、神戸の「青葉園」、愛知の「ライフ」、枚方の「ガイドヘルパー事業」その他)について聞き取り調査や資料収集を行い、支援システムづくりのプロセスと現実的機能をパターン化することによって、支援システム作りのいくつかのタイプを析出した(社会法人主導による地域資源の調整・開発型、法人による総合的な生活保障型、相談・レスパイトを主な機能とする家族支援型、行政主導により資源開発型など)。
 同時に、横浜をフィールドとして、現在進められている地域生活支援センター建設の活動を参与観察の手法によって調査し、大都市部における地域生活支援システム作りの可能性と問題点を整理した。横浜では、地域作業所、グループホームなど、法外施設が障害者の地域生活を支える上で重要な役割を担ってきた。しかし新しい生活支援センターは法人主導で進められることになっており、法人と法外組織間の連携・調整が大きな課題となっている。すなわち、法人が従来の法人内施設体系という発想から脱して、どこまで地域のニーズや資源に目を向けることができるか。また法外組織が個別組織の利害を超えて、どこまで地域全体の中での資源という自覚を持ち得るかが、生活支援支援システム作りを推進する鍵となっている。なお横浜の事例については今後も研究を継続する予定である。