表題番号:1999A-237
日付:2002/02/25
研究課題近代における万葉集の享受と創造に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学部 | 教授 | 内藤 明 |
- 研究成果概要
- 万葉集は、日本の近代にいろいろな形で読まれ、近代の文学や文化に影響を与えてきた。本研究は、万葉集の実体を歴史的に復元してその本質を探りつつ、一方で研究・批評を動かしてきた万葉、広くは日本の文学・文化に対する近代の言説・観念・方法などの生成とその変化を明らかにしていこうとするものである。取り組んだ考察として、万葉集の短歌と、それを享受、発展させたと思われる、近代短歌における同様の様式を持った歌の分析がある。その継承と変質の中に、和歌・短歌史に通底する本質的なものと近代の特徴を探ろうとした。その一例として、A論文は、「見れば…思ほゆ」という表現の型について分析し、その生成と展開を論じたものである。また、そこにおいて考察された短歌の構造と主体の問題は、景と情という構造をもった短歌の特質に対しての考察に向かった。B論文は、近代を代表する歌人である窪田空穂と斎藤茂吉の研究・批評の言説や方法の生成を明らかにしながら、短歌の構造、及び古代、また近代の主体のあり方に対する大きな見通しを述べたものである。これらは本研究の一端の成果であるが、表現の様式をめぐっての考察は、さらにいくつかの「型」を通して広く考察しつつあり、また近代の自然観・人間観・言語観を背後に置く万葉への言説の成立と展開は、さらに考察を加えて続稿をなす予定でる。それらを総合することで、近代における万葉集の享受から創造への展開が、いくつかの視点から明らかにされる。
A 2000年1月「短歌の構造と主体―見れ…ば思ほゆの型をめぐって」(戸谷高明編『古代文学の思想と表現』新典社 所収)
B 3月「万葉集の近代と古代―空穂・茂吉から人麻呂・家持へ」(「国文学研究」第百三十号)