表題番号:1999A-236 日付:2004/04/01
研究課題イルストラクチャー意思決定問題の研究~パブリックマネジメントへの応用を目指して~
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 常田 稔
研究成果概要
 マネジメントにおける意思決定の問題は、その目標、制御変数(代替案)、非制御変数(環境要因)のすべてが完全に同定されている場合は良構造的である(well-structured)と言われ、その一部もしくは全部が同定できない場合には悪構造的もしくは非構造的である(ill-structured)と言われる。
 本研究では、イルストラクチャーな意思決定問題に対する取扱いを研究した。
 まず、イルストラクチャーであるとして認識された問題を構造化する方法を開発した。具体的には、意思決定の当事者に対して意思決定の支援者が予め理論的根拠に基づいて用意しておいた一連の質問を発することによって当事者が漠然と懐いている目標・代替案・環境要因に対するイメージを構造化し、これらを同定する方法である。特に、目標の設定に関しては、意思決定の当事者に目標階層図を順次作成・改良させて行くための効果的な質問体系を構築することができ、学生に対する実験および地方自治体の行政実務者に対する適用からその質問体系が有効であることが確かめられた。また、この実験および適用から、問題によっては、最初イルストラクチャーであると認識されたものでも、構造化して行く過程で良構造問題に変換できうるものがあることが明らかとなり、OR等の最適化方法を実用的に導入するための手掛かりが得られた。
 次に、パブリック・マネジメントにおける意思決定を理論的に考察し、その多くの問題が本質的にイルストラクチャーであること、パブリック・マネジメントにあっては目標・代替案・環境要因を決定すること、すなわち、決定すべきことを決定することがその本質であることを明らかにした。これから、メタ意思決定なる概念を導入することによって、パブリック・マネジメントに対する新しいひとつの理論的枠組みを提案することができた。